相場事例その7 官営企業で迷走JDIの終幕ストーリー

相場事例その7 官営企業で迷走JDIの終幕ストーリー

 導入部分

 ジャパンディスプレイ(JDI)は2012年に官製ファンドによって、ソニーと日立、東芝の液晶部門を統合する形で成立しました。産業革新機構が主導したことから、「日の丸液晶」とも言われ、当時世界ナンバーワンのシェアを誇っていました。しかしながら、2014年の上場後、2020年に至るまで6年連続で営業赤字を出し続け、資金が底を尽きかけるたびに公費が注入されていったのです。

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 詳しく解説

 ジャパンディスプレイは、中小小型液用の製造に強みをもっています。しかしながら、中韓勢(中国:BOE、韓国:サムスン、LGディスプレイなど)の台頭により、収益環境は悪化していきました。収入源の大半はスマートフォン(スマホ)で、特にアップルのiPhonemの売上に占める割合は、全体の6割に上ります(2019年3月期時点)。

 そのため、アップルのiPhoneの販売台数が不振に陥ると、一気に政府の支援がなければ、潰れてしまうのです。JDIはよく同時期に経営不振に陥った液晶パネルで一本足打法のシャープと比較されます。当時JDIと経営統合し、日の丸液晶としての再建の可能性がありました。しかしながら、シャープは香港の鴻海精密工業の傘下に入る道を選択します。元々は外資の傘下に入るのには抵抗があったようですが、ソフトバンクの孫正義氏の仲介により、鴻海の社長郭台銘氏とシャープの社長を引き合わせ、合意に至らせたと言われています。

 郭台銘氏は、「民主主義じゃメシは食えない」と言った人物です。日本は確かに民主主義を大事にし、電気産業を成長させてきました。しかし、新興国のカリスマ的リーダーシップの下では、煩悩な社長は無能と化します。現にシャープは再建が出来て、東証1部に復帰できたのに対して、JDIは、政府の資金が未だに追加的に入り続けています。社長は、経産省から天下りで入ってきた人など経営手腕に疑念を持たざるを得ない人物ばかりです。

 2020年8月には、主力の白山工場(石川県白山市)をシャープに売却するとの報道がありました。複数の報道によると、売却額は713億円としています。JDIは今後も政府の支援を受けながら、再起を図ると思われますが、安倍政権が退陣した今、アベノミクスは事実上終焉を迎えています。この中、新政権からの追加の支援を受けられるかは、未知数となるでしょう。

 基本的には政府などから支援を受けた企業の多くは、結局の所倒産に至るケースが多くあります。どんなに優秀な大学を出ても、経営手腕は磨けないのと、リーダーとして組織を率いていくには、やはりサラリーマン社長では、もはや通用しない時代が到来しているのかもしれません。かつて日本も松下幸之助や本田宗一郎など有能な経営者は多数いました。彼らに共通していたのは、徹底的な現場主義です。けれど、政府から入った経営者にそのような地に足のついた経営者はどのくらい存在するのでしょうか。株式投資道場の見解としては、基本的に政府が出資する企業は、投資を控えるのが無難と考えいます。ぜひ投資の際の参考にしてください。

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