大手企業の本社ビル売却加速・コロナ禍で現金確保

大手企業の本社ビル売却加速・コロナ禍で現金確保

 導入部分

 大手企業が本社ビルを売却する動きが進んでいます。電通をはじめ、NECやオンワードホールディング、エイチ・アイ・エス、JTBなど名だたる企業が金策に走っています。売却した企業は、コロナ禍で設備投資を控えたことによる影響、緊急事態宣言で旅行需要が消滅したことで業績が悪化した企業が多くを占めます。手持ちの現金を確保し、資金ショートを防ぐことに各会社が奔走しています。

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 詳しく解説

 多くの企業が、過去の遺産を切り崩して急場をしのいでいます。バブル崩壊後、多くの会社が後始末に追われる中、JTBは円高を追い風に海外旅行者は年間で1000万人超を達成。その当時の貯えた利益で、2001年に大阪天王洲に本社ビルを構えるまでに栄華を築き上げます。そんな過去に積み上げてきた遺産もコロナの拡大で一気に遺産を放出し、栄華の象徴だった本社ビルも300億円前後で手放します。

 エイチ・アイ・エスもコロナの影響で旅行需要が消滅し、最終的な損益が過去最大の530億円の赤字となる見通しになりました。コロナの影響で売上高は前の年度より70%減って1250億円、最終的な損益は530億円の赤字となっています。2021年7月末時点で970億円の現金を確保していますが、東京都港区の本社ビルを324億円で売却しています。ビルの売却や新株予約権(119億円)による資金繰りの確保がなければ、手元の現金は500億円弱まで落ち込んでいたと考えられます。

 各企業の本社ビル売却による影響は、東京都心のオフィスビルの空室率を引き上げています。仲介大手の三木商事によると、東京ビジネス地区(千代田、中央、港、新宿、渋谷の都心5区)の空室率は、コロナが国内に本格的に流入する前の2019年12月は1.88%でしたが、コロナの感染拡大で各社の大手企業の業績は悪化。オフィス需要活況かの境目を表す5%を2021年2月に突破、5.24%にまで拡大、2021年9月には6.43%にまで達します。

 リーマンショック後には、民主党の失政などを重なり空室率が10%超となるなど、需要が低迷していましたが、今後コロナの再拡大が始まれば、本社ビルの売却はさらに進むと予想されます。10%越えは夢物語ではなく、秒読み段階に近づいているのです。こうした中、テレワークを拡大させる会社が増えれば、オフィスビルを売却する動きはますます増えると予想。また、豪勢なオフィスを維持し、定期券を従業員に配るような非効率的な経営は終わりを告げようとしています。

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