経済講義 その12 働き方改革で貧しい生活になる!?
経済講義 その12 働き方改革で貧しい生活になる!?
電通の社員であった高橋まつりさんが2016年に投身自殺をしたことで過重労働問題が社会問題となりました。日本では長らく長時間労働を美徳とする文化が根強くありましたが、1人の女性の死が長時間労働を悪とする風潮に変化します。これにより長時間労働は改善されますが、生活残業をしていた労働者にとって厳しい時代に変わるのです。
日本の多くのサラリーマンは、残業代ありきで生活設計を立てている傾向にありました。夜遅くまで働くことで工数管理がずぶずぶになるだけでなく、労務の工数などが水増しされるなど非効率な労務環境が横行していました。日本生産性本部が発表した2019年の労働生産性の国際比較によると、日本の労働生産性はOECDの加盟国で21位となっています。ドイツやフランスなどは、日本の年間労働時間(約1600時間)と比べて10~20%ほど短いですが、時間当たりで見た生産では、日本を上回って推移しています。
長時間労働で残業代を請求する文化が長らく続いていましたが、少ない時間で成果を上げる文化に変わったことで、生活残業が出来なくなりました。その結果、多くのサラリーマンは給与削減を余儀なくされるのです。生活残業がある程度社会を安定させてきた側面があったと考えられますが、短期的な収益の追及が結果として、社会に大きな禍根を残す結果になります。もちろん筆者は、成果を残せないままあからさまに残業をすることは許容していません。
短期的な収益を追求することで、1人の生活で手一杯になるので家庭を持ったり、子どもを産んだりするのが難しい社会になっていきます。その結果社会から活力が失われていきます。日本人の傾向としては、問題が起こるとモノの本質を考えず短絡的に制度設計をしてしまいます。たしかに、短期的には労働者の労務環境は改善され、働きやすい社会は実現します。但し、それと引き換えに肝心の収入が減ることに誰も言及しませんが…
給料が下がれば当然生活は貧しくなります。安い給料でやりくりしないといけなくなるので、消費に回そうとする比率は減り、貯蓄などに回す傾向が強まります。多くの人は漠然と将来年金が貰えなくなるなどの不安を抱いています。こうした問題に真摯に取り組めないと、消費が高まることはありません。
不安の種をなくすためには、収入源を増やす施策、支出面の不安を取り除く施策が必要になります。具体的には働き方改革を見直す必要があると思います。本質的には単に残業代を削減するのではなく、基本給などの給与体系の見直し(上昇)とセットで議論しないといけないと思います。時間を短時間でできるのであれば、基本給をあげるという施策が必要です。基本的に給与を上げることで労働に対するインセンティブが働くので、そうした仕組みを構築することで従業員のやる気が起こります。
何もしないと給与は上がらないばかりか、今後は減少の可能性が高くなります。そのため職場環境の改善させ成果を上げやすい環境を整備することが必要になります。その際経営者と労働者が相互に歩み寄れる職場かどうかがポイントなります。現状に甘んじている方は今後、給与が上がることはないと考えてよいでしょう。職場環境で改善を見込めない場合、転職をして、給与体系や労働環境の改善を求めるのも手です。これも一つの投資になります
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