第5級 その1 リストラを実行した企業の株価は一時的に上がる
第5級 その1 リストラを実行した企業の株価は一時的に上がる
経営状態が悪化した企業は、人件費の削減を図るためリストラを実施します。企業の経費のうち最もコストが大きいのが人件費です。上場企業は経営状態が改善させるため、リストラを実施します。リストラを実行したことを投資家に公表すると、財務状態が軽くなったことを好感し、一時的に株価は上昇するのです。
リストラを実施した企業の株価が上昇するのは、昔からの定石です。資本主義経済発祥の地イギリスでは、かつては海洋大国として覇権を握っていた頃、船員を大量に雇っていました。そのパフォーマンスが全船員の半分以下の場合、定期的に解雇していたそうです。その解雇した情報を開示すると株価は上昇したそうです。人件費が大幅に抑制されることを期待した買いが入るからです。
現代においても、リストラを実施すると株価が上昇するのは同じです。人件費の負担が軽くなること、総資産に対する回転率が改善されるため、株価は上昇に転じます。つまり、業績が悪化した企業は、リストラを行えば、株価が上昇すると思い込む経営者は多いのです。近年のパターンとしては、40歳以上でかつ3年以上勤務した従業員について希望退職を募るという名目で、リストラするのです。特に、40代以降は特に年功序列型賃金制度が残っており、企業にとっては大きな負担になっています。
一方で、リストラを断行した企業は、長期的に活力を失っていきます。この話は大手企業で勤務されている皆さんのほうが詳しいかもしれません。ある企業で2000人のリストラが断行されると、社内の活気は一気に失われていきます。リストラを実施すると、ダメな社員から辞めさせられるイメージがありますが、実は優秀な社員から逃げ出していく傾向にあります。すると、革新的な技術を作った優秀な社員や実働部隊など他社でも通用する有能な社員が社内に残らなくなり、会社の活気は失われていきます。
また、会社に対する忠誠心なども失われていくため、長期的に会社の活力は削がれていきます。リストラを実施することで有名なNECや富士通、日産などは経営悪化したとき多くリストラを実施したことにより、多くの優秀な社員の放出を招いています。特に1980年代に最初にリストラを断行したパイオニアは、今や虎の子であるインクリメント・ピーを放出し、2020年度末には事業継続自体、難しいと言われています。
つまり、大企業の経営者が安易にリストラを断行すると、短期的には経営は改善されます。その反面、長期的に育てた人材やノウハウを失うことにもつながるのです。確かに現代では技術革新が目まぐるしく、年齢を経るごとに技術が蓄積するとされる人材育成のモデルは通用しなくなっている側面があります。しかし、長期的に人材が減っていくことで、日本の長期的な活力がその分削がれていくのです。
短期で儲けるデイトレードのような投資手法を考えている方は別ですが、長期的な投資を考えている人にとっては、リストラを毎年やるような企業に投資をすることは避けるのが無難だと思います。
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